あれからりーちゃんと私は別れて各クラスへと入っていった。



「のん、はよっ!」



突然聞こえてきた声に身に覚えがあるな、と思いつつ辺りを見回した。



「ここ、ここ〜!」

「…譲?」

「おう!春休みぶりだなあー。」



にかっと可愛らしい笑顔を見せたのは中等部の三年間委員会が一緒だった南譲(ミナミ ユズル)だった。



「ここ座れよ。」



譲はポンポンと自分の隣の席を叩いた。

(…じゃあそこに座っちゃお!)

私は譲の隣の席についた。



「てか譲って外部行くんじゃなかったっけ?」

「まあなー、だけど家から近いしやっぱ青葉にした!」



何を隠そう譲は陸上で全国までいくくらい凄い選手だ。
外部からたくさん誘われてたからてっきりそっちにいくのだろうな、とばかり思っていた。



「そーいうのんも外部行くんじゃなかったっけ?」



本当にそれには触れないで欲しい、うん。



「落ちたから此処にいるんでしょ。」

「確かにそーだわ、準太先輩喜んだろーな!」

「うん、よくやったとかほざいてたよ。あの野郎。」



…あの準兄の満面の笑み。
思い出したらイライラしてきた。

(腸が煮えくり返りそうだわ!)



「(のんも大変だなあ。)」



―――譲がこんなことを思っていたなんて私は知るよしもなかった。