フィールドから戻り、ホームに帰宅する前に酒場でたむろする。
「そろそろアイテムボックスの整理しなきゃ。ガラクタでいっぱい!」
酒樽の上に腰掛けたキアロは嘆いた。

一方私は、その酒樽をテーブル代わりに、マジックビールを飲んでいた。
「今日は人、多いわね。」
酒場はたくさんの人でごった返していた。

隣から溜め息が聞こえた。
「そりゃあ、今日は休みの日だからね。」
「え?今日平日でしょ?」
「ハァ…祝日よ。」
その溜め息は、私にがっかりしたのではなく、人が多過ぎてダウンしそうなサーバーにだと信じたい。

時間の感覚はなんとなく分かるが、今の私は夏休みの子供のように、曜日の感覚は無くなっていた。
「ねぇ、ちょっとは世間について関心持ったら?」
「持ってるわよ…。」
「じゃあ、最近のニュースは?」
知らないわよ、と私は溜め息混じりで返事する。

頬杖をついて酒樽にもたれ掛かった。
「ねぇ…思い出さない?」
そう言うと、何事だ?という顔で私を見下ろす。

グラスを手で構いながら
「初めて出会った時よ。
 …ポツンとバザーの隅っこに座って…。」
思い出し笑いを堪えながら、私はキアロを見上げた。