ACcess -弥猛-

「ねぇ、キアロ…。貴方は通路だけのダンジョンなんて、見たことがある?」
「…え?通路、だけ?」
急にそんなの言われても…。
でも、ダンジョンなんて言えない。

フィールドがあり、その中に古城や洞窟がダンジョンとして存在する。ダンジョンの中は何層にも階が存在し、トラップルームやモンスタールームなんかがあり、最終目的は宝部屋だ。
それが存在しないのならば、ソレはアタシの知ってるダンジョンの定義に反してる。

考えながら渋い顔をしたら笑われた。
「フフっ…そう、そんなものはダンジョンなんて言えないわよね。
 でもそれは、確かに存在した。貴方と私はそこに立った。これは変わらない事実…。
 私が知らない…いや、私の知らないうちに。」
「…でもなんで、アリスが知らないの?
 アリスは…世界の事ならなんでも知ってる、じゃん?ここは…アリスの世界じゃん?」

そんなアタシの問い掛けに、アリスは緊張させていた顔の筋肉が綻んだみたいだった。
「…私の世界、ね。面白い表現だわ。
 いい、キアロ?ここは私の世界でもあるけど、貴方の世界でもある。分かるわね?」
「…うん?」
「フフっ。そのままの意味。
 それに、私は何も知らない。貴方の方がよっぽど“世界”を知ってる。」

また貴方のコレクション、見せて頂戴ね。そう呟いた。
一度、アリスにアタシが集めているものの画像を送った事を思い出した。