ACcess -弥猛-

「これは…ｳｻﾞｷﾞの穴？
　ねぇ、どう思う？」

「…ｱﾘｽ？」

彼女の言った意味が全く分からなかった。
ｳｻｷﾞ？

ｳｻｷﾞって…。


ｱﾘｽの顔は何かに怯えていて、喜んでいて、悲しんでいた。
それはｱﾀｼには理解できなかった。

「貴方はこのまま元来た道をお戻りなさい。」
「…えっ!?」
「いいから。」

ｱﾀｼの顔も見ず、後へ押した。
「ｱ…ｱﾘｽはどうするの!?」

何か本能的なものが危険信号を出す。
引き留めなくてはいけない。
「ｱﾘｽ！」
「…そうね。私はただ、前に進むだけよ…。」

それだけ言うと、彼女は闇に静かに融けていった。

「…ｱﾘｽっ！」

ｱﾀｼの声は彼女に届かなかった。

いや、ｱﾀｼの声は目の前の暗闇に掻き消されていた。


体の芯から冷えるような寒さを感じて身震いした。

ｱﾀｼはｱﾘｽが消えていった前方の暗闇に向けて少し目を凝らした後、後ろへ下がり方向を変えて、今来た道を走った。

それはまるでこの場から逃げるように…。

とにかく階段に向かわなきゃ…！