「戴いた簪を懐から出して…着けて下さいませんか?」



何とも幼く
何とも美しく
くしゃっと笑う李由姫様は―――


まさに散りゆく桜




「とても似合っております」

「嬉しい…」



涙を一粒…はらりと流した姫様は目を瞑(ツム)られる。



「李由姫様? …愛しております」



耳元で囁き…
巧哉様は流れ行く時間を惜しむ程ゆっくりと口付けをなさった。



そんな儚い言葉は
姫様の耳に入ったのだろうか………?