『姫様? 何でもお父上様の大切な友人のようで…何でもその方は武士で旅をしていらっしゃるようですよ。外のお話を聞いてみたらどうですか?』

少し肩を震わせて

「真(マコト)か?」

と聞きながら立ち上がり、客間に向かう姫様に私は笑みがこぼれるます。
私は姫様が女中の中で唯一、心を許して我が儘も愚痴も悩みさえも話してくださるのが嬉しくて仕方ありません…



客間が近くなると姫様のお顔はどんどん無表情になり、客間に入ってしまえば人形のようになる姿はいつ見ても胸が苦しくなってしまいます。


「おぉ…来たか」

「はい、父上」

「私の愛娘の李由じゃ」

「李由でございます」


あの幼かった李由姫様がこんなに美しくなられて、と仰(オッシャ)ったのはお父上様の友人…加藤様