「はい。 とても、いい香りでしょう?」 彼女が握った枝に咲く小さなきんいろの花は、淡くもあまい匂いを精一杯ふりまいた。 「好きなの? 金木犀」 青年の問い掛けに、少し思案してから彼女は答えた。 「ええ――正確には、わたしの王子様が」