仮面舞踏会【短編二編】

二人は、高層ビルの最上階にあるレストランバーに来ていた。

観覧車のライトアップが間近に見える。

『ところで片倉さん!実は・・・・・黒木京香さんのことですが』

(え?なんで京香?)

『京香が、どうかしましたか?』

『お友達のあなたに こんなことを訊くのも変ですが、

彼女・・・お付き合いしている男性はいるんでしょうか?』

絵梨香は予想外の質問に、かなり動揺した。

( この人は私ではなく、京香に興味があるのだ )

かなり屈辱的だった。こんなことは初めてだ。京香に負けるなんて!

絵梨香は、しばらく俯いて黙っていたが、

顔を上げると大きな潤んだ瞳でじっと駿を見つめて話し出した。

『絶対に私から聞いたなんて言わないでくださいね。

彼女、婚約者がいるんです。

結婚式は、まだ先みたいですけれど。

でも結城さんが京香のことを気になる気持ち よくわかります。

彼女・・・・すごく美人だし、

私の知っている誰よりも性格がいいんですもの』

『そうですか・・・』

駿は残念そうに苦笑いした。

『では、私はこれで失礼します』

突然、絵梨香が席を立って帰ろうとした。

『待ってください。家まで送らせてください』

もともと一人で帰る気などなかった絵梨香の口元が

ニヤリとつりあがったが

駿のほうに振り返ったときには、

とびきり可愛らしい笑みになっていた。

その後は絵梨香の予想どおりの展開で、

駿の心を手に入れるのに時間はかからなかった。