仮面舞踏会【短編二編】

色は違うが あの占い師の不思議な薬とそっくりだ。

『あの・・・これ 占い師の女性から・・・・・

私のとは違うみたいですけれど・・・・・』

『その通りです。この薬は、僕を別人にする効力があります。』

真奈美は意味がわからないという表情で市ノ瀬の次の言葉を待った。

『ずっと好きだった女性と同性同名の人に興味があった。

でもその人と会うために、僕は僕以外の人になる必要があったのです。』

『でも、何の為に?』

『もしも僕の会いたかった真奈美さんなら、

彼女を傷つけた僕を許していないから。

卑怯だと思いますが、会ってすぐに嫌な想いをさせたくなかったし、

僕自身も正面からぶつかる勇気もなかった。

でもどうしても君に会いたかったんだ!』

『え?も・・・しかして あなたは・・・』

『どこから話せばいいものか・・・・・少々混乱しています』

そう言うと市ノ瀬は、真奈美に手を差し出した。

『一緒に来てほしい所があります』

二人は店を出ると、タクシーに乗った。

真奈美にはまったく訳が分からない・・・・・

タクシーは夜景の綺麗な都会の高速道路を湾岸方面へと走ってゆく

高速道路を降りて10分ほどで停車した。

車を降りると、そこはコンサートホールだった。

『さぁ!こちらへ』

『でも』 真奈美が躊躇すると

『安心して。勝手に入るわけじゃないよ。鍵を開けておいてもらったから』

中へ入ると、ピラミット形の高い天井、広大に続く客席に圧倒された。

中央のステージに大きなグランドピアノがある。

市ノ瀬は、真奈美の手を引いて

ステージから程よく離れた客席へと案内すると、

グランドピアノに向かった。