仮面舞踏会【短編二編】

玄関で里緒を見送った真奈美が、

リビングに戻って何気なくテレビを見ると、画面に釘付けになった。

真奈美の記憶は、遠い過去へ遡っていく・・・・・・・

『好きじゃないよ!あんなブス!』

その夜は涙で枕を濡らし、朝まで眠れなかった。

その人が今、テレビに映っている。よく似た人なのかしら?

その番組の司会者が言う

『では高柳 佑さんの新曲を演奏していただきます』

間違いない!彼だ。

彼の奏でる音色は、まるで朝の白銀の世界のような透き通った美しい音色だった。

高柳 佑・・・・・・真奈美はインターネットで検索してみた。

辛い過去の憧れの人は、今では人気上昇中の作曲家でピアニストらしい。

小学5年生の時に同じクラスになったのがきっかけで好きになった。

それでもそんなに話すことも出来ないでいた。

中学になって再び同じクラスになり、

隣の席になってからは自然と言葉を交わすことも多くなった。

真奈美は毎日が嬉しくて学校へ行くのが楽しかった。

ある日の放課後 忘れ物を取りに教室へ戻ったとき、

人の話し声が聞こえたので立ち止まって耳を澄ませた。

『お前・・・・彼女のこと好きなんじゃないの?』

『好きじゃないよ!あんなブス!』 それは高柳の声だった。

真奈美は思わず鞄を落としてしまい 彼も真奈美の存在に気付いた。

その後、お互いが気まずくなって

一言も言葉を交わすことが出来なくなってしまったまま 

彼は遠くへ引っ越してしまった。

傷ついた心は癒えることなく 

自分に自信が持てなくなってしまった原因のひとつでもある。

私のことなんか好きになってくれる人なんていない。

いつもそう思っていたことが、真奈美から恋愛を遠ざけていたのだ。