仮面舞踏会【短編二編】

マンションのエントランス付近に川島の車が止めてある。

真奈美と里緒は顔を見合わせた。

里緒は真奈美の気持ちを察したように言った。

『彼は、女性を見かけでしか見ない人よ。

少しでも信じたい気持ちは、あんなひどいことをした私にもわかるわ。

でも、彼は真奈美とはつりあわない・・・・

価値のない人よ・・・私が会って話すから、

真奈美は隠れていて・・・・』

『いいの・・・自分で言う。遅かれ早かれこうなっていたのよ。

だって彼は市ノ瀬さんじゃないのだから』

真奈美は、わずかな間でも、楽しかった日々を思い出していた。

あの優しさが、すべて嘘だったなんて・・・・

一緒に見たあの日の空と海の輝き、あの笑顔もすべて嘘だったなんて・・・・

玄関ドアの前に、川島が花束を抱えて立っていた。

真奈美は、躊躇うことなく近づいた。

里緒は遠慮がちに、3歩ほど離れている。

『川島さん』

川島は、他人を見る目で真奈美を見た。

そばにいる里緒に気付くと、ほっとしたように話しかけた。

『真奈美さんは?携帯の電源も切れているから、

会社へ電話したら風邪で休んでいると聞いて心配で・・・・』

『私が真奈美です』

『?あなたは真奈美さんじゃないですよ。突然何を言うのですか?

里緒さん!この人は誰ですか?』

『真奈美です。説明しても信じてもらえないと思うけれど、

彼女の今の姿が本当の真奈美なのです』

『君まで変なことを言って僕をからかわないでくれ』