仮面舞踏会【短編二編】

それからしばらくは楽しい日々が続いた。

女性社員から人気のある男性から 食事に誘われることもあった。

もちろん一度も一緒に行ったことはなかったが

素敵な男性に誘われるのは悪い気がしない。

ほんの数日間で真奈美は別人に生まれ変わった気持ちだった。

日曜日になると、川島が花束を抱えて訪ねてくれる。

おいしい紅茶を飲んで、川島の車でドライブをする。

『今日はどこへ行きたい?』

『そうね・・・・・海へ行きたい』

『僕たちだけの海へ連れて行ってあげるよ』

遥か遠く どこまでも続く水平線を眺めながら、

誰もいない砂浜で過ごす午後・・・・・

ハイヒールを脱ぎ捨て 裸足で歩く砂浜は凍りつくほどの冷たさだった。

『風邪をひいてしまうよ』

『だって・・・気持ちいいんだもの』

真奈美は不意に転びそうになった。

川島が素早く助け起す・・・・突然二人は見つめ合った。

生まれて初めてのキスになりそうな・・・・・

真奈美は川島の腕をすり抜け、今度は本当に転んでしまった。

『大丈夫かい?ごめん』

『いいえ 私こそごめんなさい』

『行こう!!いいレストランがあるんだ』

ヨットハーバーの近くの海色の洋館で、

海を見ながらの食事は格別だった。

夕方色に染まるグラデーションの空は自然が作り出した奇跡だ。

まるで映画のワンシーンのよう・・・・・・

何もかもがはじめてのことで、真奈美は幸せだった。

たったひとつを除いて・・・・・。