その女は魅力溢れていた。

通りすがりの男女の注目を浴びながら、

クリスマスで賑わう華やかな街をさっそうと歩いていた。

女は波うつ美しい髪をなびかせて人通りの少ない路地へと入って行く。

あまりの美しさに見とれた男が女の後を追って路地に入っていった。

しかしそこに女の姿はなく男はただ呆然と立ちすくんでしまった。

その先は袋小路なのだ。ただひとり老婆の占い師がぽつんと座っていた。

『何か占ってくれ』

『お断わりします』男は気を悪くした。

『何故だ?』

『あなたさまには必要ないからです』

『必要ないだと?こんな袋小路で客もなく、

かわいそうだと思ってやったのに・・』

男はまだ何か言いたげだったが、

来た道へと引き返し人ごみの中へ消えていった。

男と入れ違いに ひとりの若い女性が現われた。

お世辞にもかわいいとか美しいとはいえない女性だが、

その眼差しからは優しさが滲み出ていた。

そして、その瞳は淋しそうにも見えた。

『あの、わたしを占ってくれませか?通りすがりの人が教えてくれたの・・

よく当たるって聞いたから。とても美しい人よ。見かけませんでしたか?

この路地に入って来たはずなのに・・。』

『私もお待ちしておりました まあ おかけなさい。』

『私が来ることを予知していたのですか?』

『貴方様には私が必要に見えただけ・・。

私の力を本当に必要だと思う人を待っていたのです』

女性は安心したのか ぽつりぽつりと話始めた。

『私 顔も知らない人を好きになってしまったのです。

半年ほど前に偶然 間違いメールが届いたので

(間違いですよ)って返信したんです。

その後すぐに差出人からお礼の内容の返事が届きました。

それがきっかけでメールの交換をするようになったのです。

顔も知らない人なのに・・・・』

『他人とは思えない人にめぐり逢えた・・・・』

『逢えたって言うんでしょうか・・・・でも、そんな気持ちです。

率直にお聞きします。もし・・・

もし彼と会ったとしたらどうなるのか占ってください。お願いします』