絵梨香は階段へ向かい一段一段上りはじめた。

踊り場まで来て上を見上げると階段は左右に分かれているものの

どうやら部屋へ通じるドアはひとつしかない。

絵梨香は迷わずドアに近い右の階段を上り、2階のドアノブに手をかけた。

ゆっくりノブを廻してドアを開けると同時にメロディーが止まった。

絵梨香は、はっ!としたが、恐る恐る奥へ進むとひとりの老婆が座っている。

『いらっしゃいませ・・・・お待ちしておりました。どうぞ』

絵梨香は、驚いたが老婆に薦められるままに

マホガニーレッドのアンティークチェアーに座った。

『私の恋愛運を占ってください・・・・・・

わたし、好きな人に別れたいって言われて・・・・』

『わかりました』

老婆はカードを捲り始めた。

『あなた・・・・本当はその人を好きではありませんね・・・・』

『そんなことありません わたし本当に彼を好きです』

『いいえ あなたが一番大切に思っているのは他人から見た自分・・・』

『確かに 以前はそうだったかもしれません。

でも今日、彼から別れを告げられて初めて気付いたのです。

彼が一番大切だってことに・・・・・あの・・・・

もう彼の気持ちを取り戻すことは出来ないのでしょうか?』

『今のままでは、その男性の心を取り返せません。諦めなさい』

『そ・・・んな・・・・諦めるなんて出来ない』

老婆はしばらく考えると

『どうしても彼を諦められないですか?』

『わたし・・・彼を失うくらいなら死んだほうがましです』

『方法がないこともありませんが・・・・』

絵梨香は、縋るような思いで両手を合わせて椅子から立つと、

占い師の老婆に一歩近づいた。

『あなたには自分のしたことをよく考えて反省する気持ちが必要です。

それをよく理解した上で、これを使ってみなさい』

老婆は、丸めたボール紙のようなものを差し出した。

絵梨香はそれを受け取ると、すぐに広げてみた。

『カレンダー?』

『そう・・・・でもただのカレンダーではありません。

過去へ誘(いざな)ってくれるカレンダーです』

よく見ると確かに日付は今日で終わっている。