アルコールと彼の指輪

「本当に?」

「え?」

「本当に冗談にしか見えない?」

 あたしの腕を掴んだままのおじさんは、更にその手に力を入れた。そうして身体まで引き寄せられ、おじさんの腕に抱き締められる。

「え、何この展開」

 あたしはおじさんの胸に身を預けながら、頓狂な声を上げた。おじさんはそんなあたしの髪に鼻先を埋めて、くすくすと笑む。

「何だろうね」

 何だろうね、じゃないよ。おじさんの癖に何で良い匂いなの、何で加齢臭じゃないの。あ、まだ二十三歳だからか。

「……確かに、君自身には興味無いよ。でも、女性としてなら興味津々だよ。俺も男だからね」

 興味津々って、変態っぽい。

「……あたし貧乳」

「気が合うね。俺も小さい方が好きだよ」

 間違い無い。おじさんは変態だ。っていうか、好きで貧乳な訳じゃないし。気が合う合わないの問題じゃないし。

「くまちゃん、俺のこと怖くなったでしょ」

 ――怖くなんかないし。