アルコールと彼の指輪

「俺はビール一本と缶酎ハイだけじゃ酔えないんだ。君は酔って眠ってしまったけど、それは俺の策略だったのかもしれない」

 おじさんはあたしの顔の両サイドに手を突いて、真剣とも思えない、微妙に笑みを含む口元でそう言った。

「俺は君を起こさないようにベッドに運んで、あんなことやこんなことをしたのかもしれないよ」

「あんなことやこんなこと?」

「それはご想像にお任せするけど、」

 何それ。って言うか自分のことなのに何で“かもしれない”なの? あ、例えばの話だからか。

「君は俺が嫌じゃなければしても良いと冗談のつもりで言ったのかもしれないけど、俺は本気にしたよ」

「本気にしたから嫌だって断ったのね」

 するとおじさんは少し目を見開いて固まった。断ったこと忘れてたのかよ。じとっと睨むようにおじさんを見ていると、おじさんは諦めの混じる声色で言う。

「そうだった。……上手くいかないな。君に男の怖さってものを教えてあげたかったんだけど」

 おじさんはゆっくりと身を起こすと、同時にあたしの腕を引いた。あたしも同じようにベッドから起き上がり、欠伸を噛み殺しながら繋げる。

「そんなのおじさんには無理だよ。だって全然怖くない。あたしに興味無いってのが丸分かりで、押し倒されたって冗談にしか思えない」