アルコールと彼の指輪

「心配?」

 おじさんは二回目の欠伸をしながら、空気を沢山含んだ変な声でそう言った。

「何が?」

 あたしにまでおじさんの欠伸が移り、同じように変な声で聞き返す。そんなあたしにおじさんは可笑しそうにくすくすと笑うと、続けた。

「いやん、もしかしたらアタシ、会ったばかりの男にヤられちゃったかもしれないッ! てね」

「きもちわる」

 おじさんがやたら無理やりに高い声で言うから、思ったことがつい口を突いて出てしまった。結構きつめに言ってしまい、けれどおじさんは特に気にした素振りも見せずに言葉を繋げる。

「だって朝起きた君の隣には男が寝てたんだよ? 心配でしょ?」

「……ん、そうでもない」

「くまちゃん……君は本当に変な子だね」

 おじさんはフゥ、と深い溜め息を吐く。そうしてあたしをチラリと横目に映したかと思えば、いきなりあたしの肩を強く押して来て、あたしはそのままベッドに押し倒されてしまった。

 ボフ、と布団が潰れたのを背中に感じながら、両肩を掴むおじさんの手を見、そして白い天井を背景に見下ろして来るおじさんの、アーモンドのような甘い瞳を見据えた。