マンションに帰ると部屋の前でおじさんと別れ、各々のドアの前に立った。ノブに手を掛ける彼を気にしつつ、鞄から鍵を取り出す。
またね、くまちゃん。
にこりと笑ってそう言った彼を呼び止めてしまったのは、ほとんど無意識に近かった。
「待って、おじさん」
鍵穴に鍵を差し込んだまま、慌てて顔を上げる。そんなあたしに応えるように、部屋へ入ろうとした足を止めて優しいアーモンドの瞳を向けて来た彼は、罪な男だ。
「ん? 何?」
「……お酒、まだ飲んでない。バーで飲む筈だったのに、おじさんのせいで飲めなかった」
せっかくの誕生日なのに、これからまた部屋で一人きりになるのは嫌だった。薄暗い自分の部屋が、嫌いだった。
全てを彼の所為にしようと、強い口調で精一杯に意地を張るあたしに、彼は薄く、優しく笑う。
「そうだったね、俺の所為だ。このケーキだって、一人じゃ食べ切れないしね」
彼はあたしの手からケーキの箱を取り上げると、彼の部屋のドアを開ける。
「おいで。俺の部屋で良かったら」
あたしはムスッとした顔を作りながら、こくりと頷いた。
またね、くまちゃん。
にこりと笑ってそう言った彼を呼び止めてしまったのは、ほとんど無意識に近かった。
「待って、おじさん」
鍵穴に鍵を差し込んだまま、慌てて顔を上げる。そんなあたしに応えるように、部屋へ入ろうとした足を止めて優しいアーモンドの瞳を向けて来た彼は、罪な男だ。
「ん? 何?」
「……お酒、まだ飲んでない。バーで飲む筈だったのに、おじさんのせいで飲めなかった」
せっかくの誕生日なのに、これからまた部屋で一人きりになるのは嫌だった。薄暗い自分の部屋が、嫌いだった。
全てを彼の所為にしようと、強い口調で精一杯に意地を張るあたしに、彼は薄く、優しく笑う。
「そうだったね、俺の所為だ。このケーキだって、一人じゃ食べ切れないしね」
彼はあたしの手からケーキの箱を取り上げると、彼の部屋のドアを開ける。
「おいで。俺の部屋で良かったら」
あたしはムスッとした顔を作りながら、こくりと頷いた。

