宮野が帰ってから三十分たった頃、携帯にﾒｰﾙが入った。

―どうだ？ｱﾊﾞﾀｰできたか？

僕は何故か嬉しくなってﾆﾔﾆﾔしながら返信した。

―うん！何とかできた！

すぐに返信が来た。早速待ち合わせらしい。
指定されたｻｰﾊﾞｰに向かう。
一種の街、ﾀｳﾝらしい。

僕は緊張しながら世界へ踏み出した。


扉を開くと、目の前には色んな形や色のたくさんのｱﾊﾞﾀｰ。

剣や斧、杖を携えたｷｬﾗｸﾀｰが目の前を通って行った。
「わぁ…。」
全体的な視点ではなく、ﾌﾗｲの目線の画面なので、自分より背の高いｱﾊﾞﾀｰ達が見下ろしながら挨拶を交わしてくる。

まるで都会に初めて上京してきた田舎者だ。
それは上京してきた人に失礼だ！なんて一人で漫才らしきものを繰り返しながらﾃｸﾃｸ歩く。

というか、浮かれすぎて待ち合わせ場所が分からない。
ｳﾛｳﾛしながら人をかき分け目標を目指す。


広場の真ん中のﾄﾞﾗｺﾞﾝの銅像の前…。

でも、たくさんの人。
周りから見ればｷｮﾛｷｮﾛとしていることだろう。
困ったな。話しかけるのもどうしたらいいか分からない。
「おい、こっちだ。」
「…へ？」
いきなりどこからともなく声をかけられた。
「後ろっ！俺だよ、ｽｶｲだよっ！」
「…？」
振り返ってみると眼光の鋭い青年が腕を組みながら立っていた。
「あ、み…宮野？」
「はい、そこっ！ﾘｱﾙﾈｰﾑ禁止ぃっ！」
「え!?は、はいっ！」
「ここではｽｶｲって呼ぶこと！いいな？」
「は…はーい！」