足早に教室に入ると、先生はまだ来ておらず、室内はざわざわとした空気に包まれていた。

僕はキョロキョロと辺りを見回した。
「水野ぉー!」
そういって宮田が手招きしていた。

注目されている様な気がして、彼の元へ急いだ。


窓際の列、日の当たり抜群でお弁当にとっては最悪な場所だ。
「…お前、何してたんだよ。」
ニヤニヤした宮田が僕に席を譲ってくれながら言った。

僕は席に座り、授業の用意を始めた。
もちろん弁当は日影に置く。
「いや、お弁当買いに…。」
「…はぁ?学食でいいじゃん!ってかいっつも学食じゃん!」

そういいながら、彼はレジ袋の中を覗き込んだ。
「新商品なんだよ。」
「…はぁ?」
「お弁当が。」


クラスのざわめきが小さくなった。
先生が入ってきたようだ。

「そんなんどうだっていいじゃん…!
 今日食べれないって訳じゃねーんだろ?」
声のトーンを落としながら、宮田は僕を変なものでも見るかの様な目で見た。
「…そうだけどさぁ…気になるくない?
誰よりも早く新商品食べたくない?」
「ばーっかじゃない?」
と鼻で笑われて終わった。