本当は雨が降ってる。
外は車が通ってる。
今日はバイトもない。

午後十時。

そんなのも感じさせないワールドでキノコを探してる俺ら。
「全然ないよ…。」
「ペッパー、ソルトに嘘つかれたんじゃなくて?」
「んなまさか…。
 いや、有り得るかもしんねぇ…。」
「おいおい!」

ペッパーをどつくモーション。
それを受けてペッパーは怒りのモーション。

「早く風呂から引きずり出してきてよっ!」
隣にフライがやってきて“嬉しい”のモーションをした。
「…おい、初心者。なんか変だぞ。」
ペッパーが腕組みのポーズ。
「…あれっ?こうか…?」
次は土下座していた。
「ははっ!
 もう、お前は…バカかっ!」
俺はまたどつくモーションを入れる。
フライの悔しがる声が草原にこだました。


ジメジメする部屋。
しかし、目の前は初夏を思わせる匂いが立ち込めていた。

平和だなぁ…。

ん…これは…?

「やった!レアキノコ見つけたっ!」
視界の片隅で何かがロックオンされた。
それは探していたキノコ。
早速採取する。

「あ、次俺が風呂行ってくるわ」
「じゃ、キノコ貰いねっ!」
「え、僕の分は?」
「ねぇよ。」
「んじゃ、後でな。」

ペッパーがログアウトと同時にソルトがログイン。
「歩ぅーっ風呂ぉー!
 …ん?あぁ、えっ?キノコ見つけた?マジかよ!」
さくさく。
草を踏む音がやけにリアルだ。
「こんな天気の日にもキノコってあるんだな。」
「ソルト、嘘だったの?」
「ふぇ?にゃんの事?
 あっあああっ!ってかさ、レベル上げしよっ!早く行こっ!ペッパーがいいワールド見つけたんだよねぇー…
 あ、飲み物取って来るからちょい待ちでっ。」