「3人、遅いよ。」
「すみません、僕が廊下で話しかけたので遅れました。」
甘木君がまとめて謝ってくれた。私と明花は頭を軽く下げると席についた。
「あ、前島、おまえ宿題の化学式再提出。」
「え、うそっ、羽須美ぃ教えてぇ。」
明花は隣の席の羽須美に言う。
「今言うな、授業終わってからにしろ。」
「はーーぃ・・・化学苦手なのになぁ・・・。」
「そういうのは聞こえないように言え。」
クラス中が笑った。
 明花は思ったことをすぐに口にする。それが嫌味にならないのが彼女の不思議なところだ。




「と、いうわけ。」
 今、修の家(アパートなの)にいる。メールはしていたけれど、修に会うのは久しぶり。最近、なんとかなんとかが何とかで忙しかったらしい。(私にはよくわからない。)今日の出来事を話した。
「一つ聞いていい?」
「なに?」
修に会えたのが嬉しくて私は身を乗り出した。
「そいつ、どんな奴?」
「甘木君?」
「そう。」
「いい人よ。高校生にしてはジェントルマンだし、成績も良いし、背の高いジャニーズ系ね。」
「随分褒めるんだな。」
修が頬杖をついた。
「やきもち?」
「そんなところだな。絢子が男の話をするのは滅多に無いことだし。」
修はふてくされた顔をする。修は大人なのにとても素直だ。

そういうところも大好き。

恥ずかしいから言わないけど。

「夏休み、もう入ったんだろ?なんで学校行ってるんだ?」
「補講期間中なの。前後五日間。合計十日。」
「頑張れよ、高校生。」
「頑張ってるわよ。学生の本分ですから。」 
「そうか、無理するなよ、絢子は頑張りすぎるところがあるからな。」
「さっきと言ってる事違うけど。」

二人っきりの部屋で小さな声で笑った。
二人しか知らない時間。

今日の神様は私に対して優しい。