それを修に言ったら

また修は少し考えた。

「恥ずかしいのと、恐かったのな、恐いってのが大きかったかもしれない。」
「恐い?何が。」
「嫌いになられたらどうしようってな。お前の友達もそうだと思うけど。」
私がしょっちゅう話をしているから、明花と甘木君に関して私の考えも修はわかっている。
「嫌いに?なるわけないじゃない。好き同士なのに。」

「でも、本人同士はそれを知らないんだろう?お前、文系のわりには勘が鈍いな。」


それは偏見だと思う。


「多分、今の状態が崩れるのが恐いんだろうな。」
「今の状態?」
「今でも十分仲が良いんだろう?その二人。」
私がうなずくと修なりの見解を述べてくれた。



自分のことを好きになってほしい。
出来れば恋人同士になりたい。
『好き』って言いたい。



でも、もし相手が自分のことを好きじゃなかったら?
今までと一緒じゃいられない。
仮に相手が今までと一緒でいてくれても



自分は一緒じゃいられない。



それならこのままでいい。


「ってことじゃないかな。」
修は軽く首をかしげた。

「よくわかるのね。経験済み?」
「済みっていうか今も実行中。」
「え?誰に?」
「絢子に。」

ものすっごく真顔で言われたから、何も言い返せなくなった。
いつもは私に合わせてくれているんだけど
真顔になった修は大人で
とてもかっこいいと思う。


「俺としてはもっと大人の関係に踏み込みたいけど、絢子に嫌われるのは嫌だから踏み込まない。」



そう言うと鼻を掻いた。

照れてる。


「私は踏み込んでくれても構わないけど。」

私はわりとこういう事はさらっと言える。


修はもう一回鼻を掻いた。
「気持ちは嬉しいけど、これは俺のけじめだから、やっぱり止めておく。絢子が大人になってからな。」
「あ、久々に子供扱いされた。」

でも前ほど嫌じゃない。
修が私を好きでいてくれている、というのがわかるから。







ねえ、神様




嫌いになんてなるはず無いのにね。



貴方が公平ならちゃんとそのことを
あの二人に教えてあげて。