「鼻息荒いな。」


勇んで教室を出て行こうとした明花はドアの前で甘木君にぶつかった。ついでに言うと明花は興奮すると鼻息が荒くなる。

「ほっといて。乙女は時に鼻息が荒くなるものなの。」
「聞いたこと無い。そんなの。」

「甘木君はどうするの?進路。」

おや、羽須美が他人に興味を示すとは珍しい。

「俺?外資系の商社に勤めたいから、多分、経済系か英文系に行くと思う。」
「外資系の商社?」

明花もくいついてきた。

「外資系って忙しいんじゃないの?アマ、結婚できないよ。」
「心配ありがとう。まだ、考えてないからいいよ。第一大学も受かってないのに。」
「あはは、確かに。」




一瞬、夕日に照らされた明花の顔が凄く『オンナ』の顔に見えた気がした。







「アマ、あのね。」
「ん?」
人に話しかけるのに珍しく明花は相手の顔を見ていない。








「もし、アマが本当に外資系の商社に勤めて、結婚したいって思ったときに相手がいなかったらネ・・・・」













「あたしがアマのお嫁さんになってもいいよ。」












「ありがとう、その時にもう一回言ってよ。」


甘木君は笑いながら崩れかけていた明花の頭のお団子を触った。






「高校生の時から、そんな冗談言っててどうするのよ。」
羽須美はそう言ったので、明花も私も甘木君も笑った。







でも、私は知ってる。


明花のあの顔
あの口調





明花は本気だったんだ。




あれは
多分
彼女の精一杯の







「好き」の合図









今日は修に会う日。
私も聞いてみようかな。





私が大人になったら



修のお嫁さんにしてくれる?




神様
どうか愛する二人に
公平な決断をしてね。