ん?床にプリントが落ちてる。
さっき明花が見ていたのと同じプリントだ。ただ違うのは問題の殆どが正解、ということ。
「あ、これアマのだ。悔しいよね、あの人、文系のくせに数学できるんだよ。」
確かに甘木くんはオールマイティーにできる。勉強も出来るし、運動神経もいい。
「何か弱点探さないと。」
「弱点って・・・。」
また笑ってしまった。
あ、教室に帰らないと。
「ごめん、明花、帰るね。」
「うん、わかった。じゃ、また放課後か明日ね。」
「ばいばい。」







教室に帰りながら考えた。
甘木君の弱点。
私は知っている。







放課後、明花は数学の再提出と格闘していた。
一人じゃなかった。


甘木君と一緒だった。
詳しい経緯は知らないけれど、多分
「あんなに出来るんだったら教えて。」
と、いつものテンポで言ったのだと思う。


明花は知らないだろうけど
去年の冬のあれ以来、
明花と甘木君の関係が
気になってしょうがない。


なので


悪いとは思ったけれど、
ついつい聞き耳をたててしまった。