どんな奴かは、まだ会っていないから知らないが、私は今、坂本が恨めしい。
(お前のせいで、今日はもう疲れたわ)
授業中ということもあってか、眠気が私を襲う。
だが、眠りに落ちる前に、授業終了を知らせるチャイムが鳴った。
「じゃあ、これで終わりな。
朱鳥ちゃん以外は、宿題やってこいよー」
そう言い残し、教室を出ていく野田。
クラスのメンバーからは、とても教師に向けて言っているとは思えない罵声が飛んでいる。
だが、私には宿題は出されていないため、特に何も言うこともなく、教室を出て行った。
向かうは、もちろん保健室。
あのふざけた紙切れを寄こした保健医に、会いに行くためだ。
(口止め、しなきゃね………
最悪の場合は……)
『うん、いいよ。
私ももう、乾いた。』
心の中で語りかければ、返事をくれる凛。
凛の承諾も得て、八重歯のうずきを抑えながらも、私は保健室への歩みを進めた。

