確かにあの時、屋上には、人の気配はなかった。
目でざっと見ても、特に人影は見えなかった。


(…やっぱりあそこにいたのは、自分の気配を消せる人物。
もう、特定できたようなもんだな。)


私の所属する秘密組織にいた人物や、今も所属している人物は、ほとんどが自分の気配を消すことができる。

かつて野田も坂本も、秘密組織に所属していたのは確かだ。

だったら、あそこにいたのは、やっぱり…




そう考えてたら、頭の中に声が響いてきた。と同時に、ズキズキとした頭痛に見舞われる。



『私のこと、誰かに話すの?』



(もしかしたら、ね。

でも話したら、私はそいつの血をもらって帰ってくる。
話すだけのメリットはあるはずだよ?)



その声は、私に問いかけてくる。
その問いに、心の中で返事をする。



『あの行為は、ただの人間には快楽を与えるだけよ…』


少しだけ、頭痛が激しくなる。その痛みに耐えながら、答える。



(そうね… でも、私にとっても凛にとっても、快楽よ。

損はしないわ。

それに、あの快楽から逃れられた人間は、今までにいなかった。

一度それを与えてしまえば、私たち専用のおやつができるのよ?)



『そこまで言うならいいわ… でも、話すときは予め言ってよ?』



(わかってるわよ。)




どうやら、納得したらしい凛。頭痛も治まった。



(とんだ災難だわ、あなたのせいでね………坂本)