問題のレベルの低さと、時間の流れの遅さに、少々苛立っていた私は、答えを少し乱暴気味に書き終えると、
「…文句はおありですか、野田先生?」
と、睨みつつも微笑みかけて、言った。
「め、滅相もございません…」
その睨みに恐怖心を抱いたのか、問題が解けたことに驚いているのかはわからないが、野田は、後ずさりをしながら私から逃げる。
そんな野田を放置して、私は席に戻る。
「猿芝居もいいところですね、野田先生?」
他の生徒には聞こえないように、野田の近くで言い残してから。
しばらく黙っていた野田は、席に着いた私を一瞥すると、すぐにいつもの表情に戻った。
「お前らー、少しは朱鳥を見習って、頭よくなるよーに!」
「へーい。」
気の抜けた返事しか返ってこないが、野田は、返ってきただけましだ、といった表情だ。
(…低レベルすぎる)
改めて、呆れる。
先程は、目をつけられることを拒んだが、最早そんなことを気にしている場合じゃなさそうだ。
(学校に慣れてきたら、サボって屋上でも行こうかな。)
そんなことを思いながら、改めて麻衣から渡された紙切れを見る。

