教室に戻ると、すでに授業が始まっていた。
屋上にいたため、チャイムが聞こえなかったらしい。


「遅れてすいません… 時間がわかんなくて…」


適当に反省してるふりをして、謝りながら言い訳をしながら教室に入る。


「あ、いいよ?
転校生だし、今日だけ特別ね。
これ以降やったら、遅刻の対象だからね!」


授業担任は野田だ。


(ラッキー… 目をつけるのは好きだけど、目をつけられるのは嫌いだからね)


なんて思いながら、席に着く。


「朱鳥ちゃん、大丈夫だった?」


後ろの席に座っていた妙子が、私にこっそりと話しかけてくる。


「うん、いきなりお腹が痛くなっちゃったんだけど…もう大丈夫。」


困ったような笑いを浮かべながら答えると、妙子も笑う。


(人間って、こんな表情豊かだっけ?)


普段会う人と言えば、組織内の人と、兄貴と、怖い顔をした裏社会の人間だけ。


みんな、厳しいばかり。


(それに慣れた私も、きっと同じ顔をしてたんだろうな…


そう思いながら、鞄からノートや教科書を取り出して、授業を受ける準備をしようと思っていたその時、


「そう言えば、朱鳥。
保健室の坂本先生から、これ渡せって。」


ひっそりと話しかけてきたのは、麻衣だ。
そう言って手渡された紙切れを開くと、中には驚くべき内容が。