「いるよ
 だけど、絶対に
 振り向いてくれない
 だって、その人には
 奥さんがいるの
 あっ、このことは
 ヒサ兄には内緒
 にしてね」

彼女もまた辛い恋を
している。

「それから
 今日の事も黙ってて
 くれるかなぁ
 ヒサ兄にだけは
 心配をかけさせたく
 ないの、お願い
 チトセ」

心配そうに
私を見つめる。

「うん、言わないよ
 心配しないで」

「良かったぁ」

なぎは安堵の表情を
浮かべて微笑んだ。

「チトセ
 今日はありがとう
 これからも宜しくね」

なぎは微笑んで
私の手を取った。

繋いだ手

温かい・・・