黒紅花

「キタムラさん変わって

 お客様、申し訳ございません

 先日発売されたばかりの新商品
 ……セットなどはいかがですか?」

「じゃあ、それで」

「キタムラさん、ドリンクお願いね」

「はい」

支払いを済ませ、商品の乗ったトレーを持つひさぎ。

「チトセ、逃げようだなんてこと
 考えるなよ、逃げても無駄だ」

例え、この場を上手に逃げ出したとしても、私がこの街に居る事がひさぎに分かってしまった以上、自ずと私が住んでいる場所も分かってしまう。

祖母の家を引っ越してはいないもの。

母だって日本には居ないし、父とは音信不通。

ひさぎから隠れる場所なんて、私にはどこにもない。

『話そう』

話……いったい何だろう?