黒紅花

貴方を懐かしく思う日が、必ず時間と共に訪れるはず……

今は苦しくても、いつか必ず。

「ごめん

 ひさぎ……」

「何、チトセ何か言った?」

「ううん」


ごめんね、ひさぎ。

私は、大好きな貴方に一番酷い傷をつける。


だけど、大丈夫

貴方にも私を忘れる時がくる。

いつか必ず……



ひさぎから逃げるように母と暮らす家に
辿り着いた私は、何もない自分の部屋
に少ない荷物を置いた。

部屋の窓から見える見慣れない町並みを
私は左から右へと目で追う。

その時、私の携帯電話が鳴り響いた。

着信相手は、ひさぎ……

出ないでおこう!

このまま、別れよう!

そう思ったのも束の間、切れては鳴る
着信音に貴方の声を最後にもう一度だけ
どうしても聞きたくなってしまった私は
電話に出てしまう。

「……もしもし?」