黒紅花

祖母は、車窓を覗きこみ私を優しく見つめて
言う。

「チトセ、じゃあね
 元気でね」

「うん、おばあちゃんも体
 気をつけてね

 今までありがとう」

手を振る祖母に別れを告げ走り出した車窓
から、私は最近やっと通いなれた道筋を
見つめる。

ひさぎと並んで歩いた道。

もう二度と、貴方と歩くことのない道。

「新しい家は、海の近くよ」

海……

砂の城……

ひさぎと過ごした時間、その全てが思い出になる。

思い出の中でしか会えない私の愛する人。

「潮の香りに心が和むわよ」

母の言葉に頷きながら、私は、こっそりと涙を拭う。

今はまだ、この胸は寂しくて悲しくて
遣る瀬無い気持ちでいっぱいだけど


いつか薄れゆく時がくるよ。

いつか忘れゆく時がくる。