黒紅花

ひさぎとの別れを決意した私は
迎えに来ていた母と暮らす為に
取りあえず、今必要な物だけを
鞄に詰め込んだ。

荷物をまとめる私の様子を見つめる祖母。

「何もそんなに急がなくても…」


そうと決めたならば
一秒でも早くこの場所を出て行こう。

決心が鈍らないうちに、早く。

半年と暮らすことのなかった部屋のドアを
私は今、閉める。

ひさぎから貰った小さなマスコットだけを
鞄にぶら提げて、部屋に残したままの恋人
のいないねずみのぬいぐるみ。

女の子のぬぐるみは、寂しげに待ってる

待ってる……


私は、母が呼び寄せたタクシーに乗車して
小さな窓から見える景色をただ黙って
見つめている。

祖母と話す母。

「お母さん、さっきの話
 一緒に暮らす事
 考えておいてくださいね

 じゃあ、また連絡します」

バタン!閉まるタクシーのドア。