彼の顔が近づいてきた。


彼の吐息をすぐ側で感じる。

「てっきり俺を誘ってるのかと思った…。」


あぁ、彼は今笑ってるんだろうな。

とか思うのだけれど、顔が近すぎて見えない。


胸の高鳴りがうるさい。苦しいくらいにドキドキして…。


もう彼の唇との距離は1センチほどしかないのに…


身体が動かない。逃げられないーーー…。


ガチャンと音がして、係員がゴンドラの鍵を開けた。


石崎くんは何事もなかったようにパッと離れて、
舌を出してニヤッと笑った。


「ちぇっ…。残念。」