翌朝

目を開けて寝返りをうつと隣に花の姿がなかった。変わりにリビングの方から明かりがついていた。

(まだ5時だけど…)

しかも今日は休日だ。不思議に思った俺は起き上がってリビングに出た。ゆっくりソファーの方へ近づくと、気配を感じた花が振り返った。

「和也さん!!」

「こんな早く起きて何してんだ…」

「えと、なんか目が覚めちゃって…。もうこのまま起きてようかな~って」

そう言って笑う花に俺も少し微笑んでみせた。

ソファーに座ると花がお茶を淹れようとしたけど、断わった。

それからお互い何も喋らず無言の時間が続いた。

最初に沈黙を破ったのは俺だった。

「昨日の夕食…」

口に出した瞬間、花の肩が動いた。花は静かに俺を見上げて、俺も花を見た。

「うまかった、ありがとな…」

花の頭を撫でながら言うと、花は満面の笑みで俺に抱きついてきた。

「嬉しい…ありがとう…」

「そ、そんな嬉しかったのか…?」

花の予想外の行動に正直驚いた。

「だって和也さんから直接聞けるだなんて、ビックリしちゃった!!凄く嬉しいです!!」

「そう…か…」

しばらく抱き合っていると花があくびをしはじめた。

「もう少し寝るか。今日は休日なんだし」

静かに頷く花を寝室に連れていき、ベッドに入った。

「おや…す…みなさぃ…」

花の声がどんどん小さくなっていき、単語も途切れ途切れになっていった。

「お休み…」

俺はこちらを向いて寝る花の頬に軽く自分の唇を当てた。それからベッドに横たわると、すぐに俺も目を閉じた。


その時、花が幸せそうに微笑んでいたことを俺は知らない。




お わ り