「これ、木下くん被ってなきゃ暑いよ?」
『俺たちは、次日陰でストレッチやったら今日は終わり。だから、問題はありませーん。』
「‥ありがとう。」
木下くんの優しさが
嬉しくて、私は笑った。
『べ、‥別に。だけどそれ汗くせーかもよ?』
そう言ってニヒッとはにかむ
木下くん。
最近は、いろんな表情が
見られるようになった。
『おーい、奏。ストレッチ。』
『おーっす。』
チームメイトに呼ばれ、
早足で練習へ戻っていく。
「汗くさくても、いいもん。」
私はその背中を眺めながら、ギュッと帽子のつばを握った。

