な、なんで?!


数秒フリーズしてから紗綾は、先程までいた部屋の中から楽しそうな談笑する声で我にかえった。


「今のって…」

そのあとの言葉は飲み込んだ。

気づかないふりをしたのだ。

美月に嫌われているかもしれないという事実に。


由美子や園長のように自分によくしてくれる人ばかりではないことに紗綾は、今更気がついた。


園児や保護者との関係もとてもデリケートな問題ではあるが、保育士同士も一緒だ。


チームワークが他の職業よりも重視されるこの職業にとって、犬猿の仲であるとそれは周りの保育士にも迷惑をかけることになる。


また、そんな大人の姿を子どもは見ていないようで見ている。

だから、美月の今の言動は紗綾にとって信じたくないことなのだ。

「早く帰りの支度しよう」

自分に言い聞かせるように、敢えて声にだした。


ギュッと握りしめた拳に悔しい、悲しい、不安な思いを隠して…。