一日がこんなにも短いことに紗綾は驚いていた。
初めての保育は、やっぱり自分の思い描いていた通りにはいかなかった。
しかし、その中でもとても充実した一日になったと紗綾は感じていた。
みんなとだいぶ仲良くなれたなぁ。
たっちゃんは、帰るとき目を見てバイバイと言ってくれた。
まだ恥ずかしそうにしてたけど、すごい進歩だよね。
嬉しいことがありすぎて紗綾は、忘れていた。
…あの人の存在を。
「キレイにしましょ~、キュッキュッキュッ♪」
勝手に作った歌を歌いながら紗綾は、園児が使った椅子などのものを雑巾で拭いて除菌していた。
「サ・ア・ヤ先生♪」
ゾワゾワ。
紗綾の背中に寒気が走った。
おいーー!
振り向いちゃダメ。
気づかないふりをするのよ紗綾。
自分に言い聞かせるように紗綾は引き攣った顔を声のする方とは逆に向け、必要以上に椅子を拭いた。
