知っているのは、加原さん、っていう苗字だけ。
あとは何も知らない。
下の名前も、年も、彼女がいるのかいないのかも。
だからこそ、ただ見てるだけじゃなにも始まらない!と思って、あたしはここに来たんだ。
「でもさ、あたしは手頃に同じ高校の人にしとけばいいと思うけど?」
「ダメッ!あたしはあの人がいいの」
だいたいの荷物の整理が終わり、くつろぎ始めたお姉ちゃん。
あたしは横目にお姉ちゃんの言葉を言い返す。
「あんたの性格的に、合わないと思うよ?」
「……なんで?」
「加原さん。いつも違う女連れてるわよ」
「………」
違う女。
それって…そうゆうことだよね。
頭の中がグルグル回る。
「あんたって昔から見る目ないよね〜」
グサグサと刺さる言葉ばかりを言いながら、ケラケラ笑っている。
「どうせ見る目ないもん
…好きになっちゃったんだもん」
「まっ、傷つくのはあんただし。
そんなことはどうでもいいから、買い物行くよ」
「は〜い…」
渋々返事をして、あたしは買い物に行く準備をする。
玄関では支度が終わって待つお姉ちゃんが、あたしを何度も呼ぶ。
「…はいはい、ちょっと待ってよ」
「ハル!いいから早くしなさい」
何度も言わなくても、今行きますよ。
心の中でつぶやきながら、玄関に行くと人影が見えた。
「あっ、もう〜、早く来てよ! 人が待ってるんだから」
「誰よ、そっ…」
誰よそれ?
と言い終わる前に、あたしを息を飲んだ。

