一ドンッ


狭い路地裏にあたしを追い込み、悠夜さんは近づいてくる。


「そのこと、他の誰かに言ったら、ただじゃおかねぇからな!」


「………はい。」


ただ頷くことしか出来ずに、あたしは悠夜さんから距離を置いた。


「…あんた、なにニヤニヤしてんの?」

「えっ?」


気づかないうちに顔がニヤついていたみたい。


あたしは顔を直すようにして、両手で頬を押さえた。


「今まで誰にもバレなかったのに。」

「えー、あんなの誰が見ても分かるよ!」


「はあっ!?まだ、兄貴にはバレてなっ…い、はず…」


唸りながら考えはじめる悠夜さん。


たぶん、コウさんにはバレてると思う。


悠夜先輩、分かりやすいほど態度変わるもん。


「っつか、早くしないと電車乗り遅れる

 アンタのせいで遅刻とか嫌だ。」


「あっ、待った!」


今にも走り出そうとする悠夜先輩の腕を掴み、動き出すのを止めた。