隣に居るシロンの横顔を見てから 帽子屋は夜空を見上げます。 虫の鳴き声しかしない 静かな夜。 シロンが懐中時計の蓋を 閉めると、帽子屋は シロンに尋ねました。 「あの方には何処まで 話されたのですか?」 「まだ全然。」 シロンは懐中時計を 片手でカチャカチャと 弄りながら言いました。 「…初めてだったんだ。」 シロンは口元を緩めながら 続けます。