タクシーが着いた場所は
お洒落な外観のマンションの
前だった。
 
室内も、もちろん素敵で
デザイナーズ・マンションだと
貴方は言う。

個性的なデザインに
私は、息を飲む。

私の荷物を椅子に置いた貴方は
ガラスのテーブルに
手に持っていた鍵と
ポケットから取り出した
煙草の箱を置く。

窓の外、寝静まった町並みを
見下ろす私を、芳野は後ろから
抱きしめる。

「しばらくの間は、ここで
 暮らそう
 でも、いつまでも今までの
 ような贅沢はできない
 
 近いうちに、この場所を
 引き払って、どこかに
 安い賃貸を借りよう

 仕事も、探さなきゃな
 取り合えず、職に就ける
 なら、何でもいい」

「ヨシノ・・・?」