茅野さんと別れた後の伊吹は
普段どおり

何も変わらなかった。

ただ、いつもは朝食を
しっかりと取る貴方が

今朝は何も食べずに
珈琲だけを飲んで、職場へと
出掛ける。

玄関先で見送る私の頭を
貴方は優しく、軽く叩いた。

「ヒイロ、心配するな
 俺は過去を振り返らない
 お前と一緒に前だけを見て
 歩いていくと決めた

 だから、そんな辛い顔
 しないで」

貴方の手が、私の頬に触れ
顎に触れて、俯く私の顔を
上げさせて、唇に
優しいキスをくれた。

幸せで、涙が出そう・・・

『過去を振り返らない』

私は・・・

嫌でも過去と

向き合わされる。