着替えた私は、部屋を出て
行く為に、ドアに手をかけた。

そして、振り返り
貴方の背中に問いかけた。

「ヨシノ、あなたは
 
 誰に愛を捧げたの?」

閉まるドアを見つめる芳野・・

その閉まったドアに
もたれて立ち尽くす秘色・・

貴方の愛は、誰のものなの?

知りたいよ・・・

それから、しばらく経って
蛇口から勢いよく流れる
水で、泡のついた顔を洗う
私に聞こえる声。

「・・・起きてたのか
 ヒイロ?」

蛇口を閉め、水は止まる。

私は、濡れた顔を拭く為に
用意してあるタオルを
袖を捲くった手を伸ばし
取ろうとした。

私の手に、伊吹さんは
タオルを渡してくれた。

「ありがとう」