その後、たまに顔を合わせればおねぇさんは私と遊んでくれるようになった。いつの間にかあの頃の気まずさはなくなって、ゼファさんとも普通に話せる様になっていた。おねぇさんの取り巻きの軍人さん達とも顔見知りになってパシリにされたりするけど、それはそれで悪くなかった。ゼファさんは私に 医科学養成所の生徒をやりながら工作員やってる人を紹介してきたけど、 なんかチャラいから断った。こんな感じでわりと楽しい毎日を送っていた。


「おねぇさん。どうやったらおねぇさんみたいになれるんですか?」
「どうやったら?」
「はい。あたしおねぇさんみたいになりたいんです。綺麗で強い女になりたいんです」
「なんなくていいよ。あんたはそのまんまでじゅうぶんだよ。それにあたしにないものをたくさん持ってるじゃないか」
「おねぇさんにないもの?」
「うん。純粋さも素直さも人間味もない。普通があたしにはないから。それが一番羨ましい」


普通じゃない。普通がない。それは工作員だから?おねぇさんはどうして工作員になったの?辛い思いまでしてなんで工作員をやってるの?そもそも工作員って
何をする人達なの……? おねぇさんがいない日。アンザックさんに聞いてみた。


「はっ!?なんで工作員かって?」
「はい。どうしておねぇさんは工作員になったか知ってますか?」
「さぁな。俺達はあいつが武器作ってる頃から知ってるけど、いきなりだったからな」
「そうなんですか!?」
「工作員は何か物騒な事情を抱えてる奴らの集まりだからな。あの節操無しだってなんかしら理由があるんだろ。じゃなきゃあんなとこ好き好んで入る奴いねぇよ。まぁ、あくまでも噂だけどな!」
「あんなとこって……」
「任務終わりの工作員はやたら重たい音がするんだよ。あれはたぶんあり得ない量の血を浴びてきてる。血を浴びても目立たないようにあの漆黒の軍服を着用させられてるんだよ。中には血生臭い奴もいるっていうしな。まぁ、俺も工作員じゃない。今のは全部噂と推測だ!あんま気にすんな」