今日の夕食は肉じゃがだった。それとほうれん草のお浸しに味噌汁。

火傷しそうな程熱いじゃがいもを頬張る。

醤油味が口いっぱいに広がった。

旨い。
安藤美樹は料理上手な上に、家事も万能である。

安藤美樹が来てからは、家事は全て彼女が取り持っている。

「美樹さん。いつも家のことしてくれてありがたいんだけど、たまにはどこかに遊びに出掛けたりしなよ」

「え」

僕は味噌汁の麩(ふ)を摘まむ。

「でも、二週間もお世話になってるし……」

美樹は語尾を濁す。

だが、単にお世話になっているお礼に、というより、出掛けたくない理由をそれらしい言葉であてがった、という雰囲気の方が感じとれた。

「はは。そんなこと、気にしなくてもいいよ。
それに、特に行きたいところがないなら無理にとは言わないし。行きたいところが出来たら声かけてよ。送り迎えぐらいするから」

暗くなった雰囲気を取り戻そうと笑顔でそう言ったが、美樹は覇気なく「はい」とうつむいただけだった。

やはり、この少女には何かあるのだろう。家出してきたくらいだ。
学校にも行ってない。

僕に、何か出来ることはあるんだろうか──。