葵のおかげで予定どおりに下校することができた。
敷地内にある、ホテルの様な寮に入っている陽菜達と別れ、校門を出る。
ふと、視線を感じる。
歩きながら鏡を取り出し、髪を整えるふりをしながら、後ろの方を鏡に映す。
幾らか距離を置いた所に、1人の男子生徒がいた。
何やらすごい形相で、こちらを見ている。
睨んでいる様にも見える。
(B組にいたな。誰だっけ…。)
鏡を片付け、歩く速度を緩めると、それまで同じ速さで歩いていた男子生徒が、走りだす。
「ぁっ…あの!橘 優月さん!」
私は振り返り、側まで来ていた男子生徒の方を見る。
顔が少し赤い。
「はい。…なんですか?」
「あの、俺、B組の安達 一輝です。」
(ああ、そうか。安達だ。)
聞いてやっと思い出した。
B組の1位だった人だ。
転校生が来たことでA組から1人落ちたから、今では2位か。
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