なんで?
寮に入ったんじゃないの?
学校内で入ってないのは私だけだ。
1・3年の特待生も、寮に入っている。
だから、当然翔もそうなのだと思っていた。
今更、私に何か用でもあるの?
少し離れた処から、規則正しい足音が聞こえる。
一定の距離を保ったまま、暫く歩いた。
私より歩幅が大きい翔が私と同じ速さで歩いているということは、彼が私にあわせていることになる。
何してんの?
早く離れたくて足を速める。
「なぁ。」
声みたいなものが聞こえた。
翔によく似た。
「なぁ。」
…また聞こえた。
私は、自分に向けられた呼びかけだと分かっていたが、無視を続けた。
「おい!」
耳を塞ぎたくなる。
アイツの声なんて聞きたくない。
それなのに
「………優月。」
私の名を呼ぶ貴方の声が
閉ざした筈の心に響く。
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