箸を持つ手が止まった。
「野田建設って…。」
陽菜が驚いたように言い、続きを促す。
「お?2人共、興味持った?」
楽しそうに身を乗り出す。
「なんかね、大阪の孤児院にいたけど、1年前、子供のいない野田夫妻に引き取られて、
決まってた高校にいったけど、名門のこの学校に来ることにしたんだって」
野田建設といえば、明治時代から続く世界的な企業だ。
`建設´とついているが、初代の社長が経営していたのが建設会社だったというだけで、現在では様々な事業に成功している。
世界中に支社がある。
翔が、私の居場所を知っていた訳が分かった。
野田建設は、慈善事業もしている。
青空育英会の後援をしている会社だ。
あのマンションも野田建設のもの。
蓮華学園にいることは言わないように、孤児院の園長に頼んだから知らなかった筈だ。
でもアイツは、蓮華学園にいることを知っていた。
なんで…?
青空育英会のことは、知っていたかもしれない。
野田建設は、育英会に多額の寄付金を送っている、というか、もう経営しているようなものだ。
そんな会社の跡取りだ。
簡単に調べられるだろう。
「優月?どーしたの?」
ハッとして顔を上げる。
陽菜の心配そうな顔が、目に映る。
考え込んでしまったらしい。
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